筑坂人vol.13山﨑さん(国際バカロレアコース卒業生)

筑坂IBコースで学んでいる一年次生が、ディプロマを取得してIBコースを卒業した先輩方にインタビューした結果をお届けします。国語の授業の一環として、インタビューのポイントや記事のまとめ方を学んだ後、自ら取材の交渉を行い、それぞれ工夫して記事にまとめています。 

インタビューに協力してくださったのは、2~3期生の卒業生です

 国際バカロレアに興味のある中学生の皆さんだけでなく、課題の多さに悩む現役筑坂生にも参考になることでしょう。それでは、どうぞご覧ください。


「挑戦心(山﨑果蓮さん) 

私がお話を聞いたのは、現在、大学で国際関係学と政治学を学んでいる、筑坂のIBコース卒業生の山﨑果蓮さんです。 

「最近の授業では、国際関係学の理論について学びました。大体の授業でグループワークの機会が多く、課題で本を読むこともありますね。」 

山﨑さんはIBの延長上の授業のようだ、ともおっしゃっていました。 今の大学に進学したきっかけは、やはりIBが関係していそうです。 

 DPには6個の科目があるのですが、私が特に楽しいと思えたのは『言語と文学』と『歴史』でした。歴史の授業では多くの本を読むことが課されたのを覚えています。本を読むことで、出来事のつながりや関係が理解できたので、それが楽しさになりました。大学でも課題として本を読むことが多々あり、この2つの科目が自分の進路選択につながったのかなと思います。」

「また今では、だれかれ構わずというわけではないですが、以前よりも自分から積極的に話しかけられるようになった気がします。」 

模擬国連サークルの会議に参加した時の山﨑さん 

 非常にハードな科目を乗り越えた今、山﨑さんは対人関係においての自分の積極性にも変化が起こったそうです。 

「新しい友達を作るという行為には勇気がいりますよね。私自身、同じクラスの人や国際生の人に声をかけることにためらいを感じていました。でも今では以前よりも自分から積極的に話しかけられるようになった気がします。」 

 このような変化が起きた理由として、課題の取り組み方について触れていました。 

「私がIB生だったときも、初対面の人に話を聞きにいく授業がありました。そのときは『誰かに声をかけるのが恥ずかしい』というためらいの気持ちよりも、『課題を終わらせたい』という気持ちの方に傾いていた気がします。だから、自分から積極性を意識して、というよりは課題をこなしていくうちに自然と積極性が身に付いたという感じですね。」 

 自分の感情よりも「終わらせたい」という気持ちが勝っていたというのは、まさにDPの現実を表しているようですね。とはいえ、こなさなければいけない課題の中には「正直やりたくないな…」と感じることもあったと思います。 

「気合いです。先延ばしにしたいと思うこともありましたが、完成度はどうであれ提出するということが大事だと思っているので。気合いで乗り越えました。」 

「あと、課題についてですが高校のときは悪い意味でまじめだったんですよ。私の場合はどうしても質のほうを高くしたいと思って、提出期限ぎりぎりまでやっていたんです。」 

 そうなんですか!私もよくやります。それでも、時間の関係で完成度が低くなってしまってモヤモヤすることが多々あるんですよね~。 

 「すべての課題の完成度はどうしても70%、80%になってしまうと思います。でも、そこでくよくよしてしまうと次に出される課題の提出期限も遅れてしまうので、そういう気持ちを忘れて次に移る、ということを大事にしていました。」 

 「大学に入ってからは課題にかける時間と質のバランスをとる方法を身につけ、バランスよくこなしていくことができるようになったと思います。これもやはりIBの授業を受けずにいたら、バランスのとり方も身に着けられなかったと思います。」 

 DPで多くのことを学んだ山﨑さんが大学に入ってから、DPを受けた自分とそうでない同級生とで何か違いを感じたことはあるのかも気になりました。 

「コミュニケーションスキルはIBを終えたからこそ得られたものだと思うし、課題を書くうえでフォーマットや形式など基礎的な部分では、大学の先取りという形で知識を身につけることができたと感じます。」 

 山﨑さんにとって、DPはポジティブな面が大きい存在ですね。 

「全体的に私としてはDPがネガティブな面で働いたことはないように思います。一般的な価値観に疑問を持つ力を身につけることもできました。これからはDPで得たスキルを踏まえ、大学に入ってから得た、英語やコミュニケーション力、社会学などの知識を生かせる職業を探しています。 

3年次の卒業前に同級生と撮った写真(下列の中央が山﨑さん)

続いて、そもそも山﨑さんが筑坂のIBを受講しようと思ったきっかけを聞いてみました。実は中学生の時に進学先としてほかの学校と迷っていたそうです。 

「もう1つの学校というのはいわゆる普通のカリキュラムでした。コミュニケーションが苦手だった私にとってそちらの方が安心できるし自分に合っていると思ったんですが、逆に自分に合っていないほうのカリキュラムを行うことで、今自分の持っていないスキルを学ぶことができるのかなと思って筑坂に決めました。」 

「それに加えて英語を話す能力やコミュニケーションスキルという、中学生のときに苦手だった部分を伸ばしたいと思って筑坂のIBの挑戦を決意しました。」 

やはり、IBの最初のイメージは「英語」ですよね。 

また山﨑さんは情報収集を通して、IBでは学ぶ側の主体性がほかの教育プログラムよりも求められると知ったそうです。 

「こういう経緯でコミュニケーション力を克服するのにIBは最適だと考えました。同時にもともと筑坂に入学するころから自分にDPのカリキュラムは向いていないと自分で知っていました。しかし、困難を感じた時には自分のスキルを伸ばすことができる機会だと信じて取り組んでいました。」 

先ほどから言葉の端々になんだかストイックな感じが垣間見えます。 

「実は、小さいころからつらいと思うことを選択するようにしています。中学生の頃は、陸上部だったんですが、小学生の頃に走るのが苦手だったから選んだんですね。なんか…好きになるかなと思って。マラソン大会で速く走れて、楽しいと思えた幼少期の経験があるんです。IBもあっていないと自分でわかってはいたんですが、力がつくことはわかっていたのであえて選びました。」 

DPも同じような理由で選んだおかげ(?) か、大学に入ってからDPよりもつらいと思った経験は、正直全くないです(笑)」 

そうなんですか。まさにRisk-Taker(IBの10の学習者像の1つ)ですね! 

「でも私は、常にいつやめるかを考えながら3年間過ごしてきました。」 

えっ、衝撃の事実です。 

「やめると言い出すのにはそれ相応の勇気がいります。その勇気を出すタイミングがなくてそのまま3年間過ぎました。 」

「まあ、例えば今やっている数学の課題が終わったらやめようかな、と思っても次に歴史の課題が出て、とループするんですよね。結局やめるタイミングもなく、課題をやるうちに意外と楽しい瞬間もあったので、継続できました!」 

G4プロジェクトに参加したときの写真(右から2番目が山﨑さん) 

最後に、中学生へのメッセージをいただきました。 

 「中学生のときの自分にも、IBは勧めると思います。やっぱり、やっているうちはつらいことも多いと思いますが、その分得られることも多いので、自分に合った勉強方法を身に着けながらうまく頑張るところと手を抜くところのバランスのちょうどよいところを見つけるのが大事かなと思います。」 

山﨑さんのインタビューを通して見えてきたものとしては、過酷なIBを生き抜くには、性格の要素も大きいということです。実は私も、筑坂のIBコースを志望したきっかけとして、山﨑さんと同様に大変だからこそ得られるものがあると思った側面があります。深くお話を聞いてみると、今の私と重なる部分もあり親近感を覚えました。今の学校生活に何か物足りなさを感じていたり、何か大きな挑戦に一歩を踏み出したかったりしている方だけでなく、山﨑さんと似たような経験をしている方も筑坂IBに来てみてはいかがでしょうか。 

(聞き手:齋藤彩来)