筑坂人vol.10榎本さん(国際バカロレアコース卒業生)

筑坂IBコースで学んでいる一年次生が、ディプロマを取得してIBコースを卒業した先輩方にインタビューした結果をお届けします。国語の授業の一環として、インタビューのポイントや記事のまとめ方を学んだ後、自ら取材の交渉を行い、それぞれ工夫して記事にまとめています。 

インタビューに協力してくださったのは、2~3期生の卒業生です

 国際バカロレアに興味のある中学生の皆さんだけでなく、課題の多さに悩む現役筑坂生にも参考になることでしょう。それでは、どうぞご覧ください。


今回、私がインタビューをしたのは榎本歩実さんです。榎本さんはドイツと日本にルーツを持ち、中学二年生から日本の学校に通い始めたそうです。現在はドイツで家族と暮らしており、四月からのドイツの学校への進学前にアルバイトに励んでいます。 

生まれた時からドイツで暮らしていた榎本さんはドイツ語が第一言語であるにも関わらず、現地校と並行して日本語の学校にも通い、当時から二つの言語を自由に扱えていたそうです。また、英語能力について尋ねると、ネイティブ並みにできたと仰っていました。

以上が簡単な榎本さんのプロフィールです。以下ではインタビューの内容を実際の対話形式でテーマごとにわけてまとめています。 

IBは自分のためになる(榎本歩実さん)

まず、榎本さんがどのような進路をたどったのかを尋ねてまとめました。         

榎本さんは、なぜIBに入ろうと思ったのですか? 

元々は海外の大学に行きたくて、日本の高校卒業資格より世界的に認められているIB格の方が行きやすいのかなと思っていました。 またエッセイの執筆やCASの活動、グループワークをするなど、机に向かって勉強する よりもプラクティカルな授業に興味があったからです。

 IBの中でも、なぜ筑坂に入ろうと思ったんですか? 

IBを学べる国公立高校の中で、筑坂が1番家から近かったからです。私はIBの勉強スタイルに強く惹かれていたので、迷わず筑坂を選びました。 

 将来の夢は決まっていますか? 

大学では法学を学んでドイツで弁護士もしくは裁判官になることを目指しています。その中でも日本人のトラブルや事件に関わり、日本とドイツを繋ぐ法的な仕事に就きたいと考えています。

 大学を決めるとき、何を一番重視していましたか? 

初めは日本か海外かの選択をします。私の場合は日本の大学が向いていないと思ったので、海外を選びました。次にどこの国に行くかについては、正直な所、その人自身や家庭の経済力で決まる部分もあると思います。私はドイツ国籍を持っていて、学費がかからないという点を考慮して、最終的にドイツにしました。あとは言語に問題がないのと、頼れる家族や友人がいて、居心地の良さがあったのもドイツに決めた理由でした。 

次に、榎本さんにIBの特徴に関する質問をいくつかしたところ、高校三年間のIB体験談を交えてお話ししてくれました。  

一個挙げるとしたらIBって何が大変ですか? 

少人数だからこその、人間関係の難しさはあると思います。グループワークが多い授業の中で、自分と考えが合わない人が出てくるのは当然で、その状況にどうやって向き合うか、どれほど冷静に相手の意見に耳を傾け、自分の意志を伝えられるかが試されます。  

英語がぺらぺらだとIB取得って簡単ですか? 

全くそんなことないです。英語の授業ではもちろん得ではあるけど、それ以外で論文を書いたりプレゼンをする時には全く言語なんて関係ないです。それよりも、批判的思考力や幅広い視点を持つことの方が、IB取得には重要です。 

IBをやめたいと思うことはありましたか? 

私はありませんでした。最初から最後までIBを楽しいと思えた方だと思います。特に『言語と文学』の授業で扱った作品の分析が大好きでした。課題も『多いな』とは思ったけど嫌いではなかったし、『勉強って本来こうあるべきだな』と思いながらやっていました。 

IBが大変なのに続けられたモチベーションはどのようなものですか? 

正直なところ、IBの勉強が大変だからと言って、続けることが辛かったとはあまり思いませんでした。モチベーションというよりも、IBの学びは自分に合っていたと感じているので、その嬉しさが優っていたんだと思います。 

どんな時が一番健康的につらかったですか? 

私は不思議なことに、IBが終わった後に1番体調を崩しました。三年間、過緊張だったのが、IBが終了してそれが一気にほぐれたんだと思います。最終試験を終えて気持ちは晴れ晴れしたはずなんですけど、体はそうでもなかったみたいです。

IBを取得するため・生き残るために一番大切なスキルって何ですか? 

1番は楽しむことですね。楽しいと思える解釈力がとにかく大切です。私は数学が苦手で私は数学が苦手で、どうしても楽しめなかった時にはIBの仲間と深夜12時から朝6時まで通話しながら課題に打ち込んでいました。そうすると自然に楽しくなってきて、やる気が出てきました。

IBはどうやって日々の生活やこれからの将来に役立ちますか? 

一つあげるなら、自分が思っていることを相手に的確に伝える力が養われたなと感じます。数々の論述やプレゼンを通して学んだ結果だと思います。あとはIBをやり切ったという自信ですかね。この先なんでも頑張れると思います。  

IBの悪いところと良いところを教えてください。 

いいところは果てしない量の知識や経験を積めることです。勉強もそうだけど、それ以外でも、この三年間は自分をより知れるプロセスだと思います。毎日発見があり、自分は何が得意で、苦手で、楽しめるのか。そこからどう言う人間になりたいか、見つけられます。

悪いところというか、しょうがない点ではあるんですが、必勝法がないことです。特にエッセイなどの論述に関しては、先生の採点が良かったとしても、採点官が悪いと判断すると、思いもよらない結果になってしまいます。過去問をやっても、毎年IBの方針も変わりつつあるので、適応するのが先生・生徒共に大変な印象があります。あとは、課題の量が高校生の負担になりすぎている点です。今思うと、当時みんなよくやったなと感心します。 

振り返ってみて、榎本さんは中学三年生の自分にIBをお勧めしますか? 

すると思います。ただし、もっとこうすれば良かったと言うアドバイスも添えたいですね。適度に運動し、必ず睡眠をとること、そして完璧主義をやめることを伝えたうえでIBをお勧めします。

中学生はみんなIBで学ぶべきですか?向き不向きがありますか? 

私の代とシステムが変わっていなければ、向き不向きはある気がします。膨大な量の知識を頭に入れることに抵抗がない人には向いている思いますが、はっきり言ってIBはやりすぎなので、全ての人がこなす必要は全くないと思います。

向いてない人ってどんな人しょうか 

高校生活を全力でエンジョイしたいと感じている人にはあまりおすすめしません。我々も最後の年の文化祭では離れた部屋で課題をやっていた記憶があります。

あとは、対立を恐れてしまう人には向いていないのかなと思います。グループワークでは意見が噛み合わないことが日常的に起こるので、それをプライベートに持ち込まず、冷静に話し合いで解決できる力が必要です。もちろん、プライベートの対立を授業に持ち込む、逆のパターンも然りですが。

最後に、中学生へ、IBの高校に入る前に『やっといたほうがいいぞ』っていう事ありますか? 

『何でも来い』という気持ちがあれば、十分だと思います。結局のところIB は入ってみないと分からないことばかりで、何を準備したとしても、必ず躓きます。人それぞれ違う壁に当たって、成長していくと思うので。自分に合った勉強法も、入ってから見つけていけると思うので、最初はなんでも受け止めてやる勢いで、来てください。 

IBを選んで来てくださる方、心から応援しています。 

以上が榎本さんとのインタビューです。 まだまだありますが厳選してまとめました。

このインタビューは現在IBに興味がある中学生の方々が知りたいことを目的として行いましたが、私自身このインタビューを通して改めてIBの大変さを感じました。三か月後にはIBが始まり、今とは比べものにならない量の課題や難しいTOKのトピック、さらには経験したことのない疲れを感じることになりますが、榎本さんに聞いたIBを乗り切る方法や自分を大切にするということを意識しながら力を尽くしたいと思います。 

(聞き手 津田蓮治)